借り換え時の金利の選択

住宅ローンの金利には大きくわけて、「変動金利型」と「固定金利型」の2種類があります。
住宅購入時、最初に契約する住宅ローンを「変動金利型」にすべきか、「固定金利型」にすべきか迷われた方も多いでしょう。
そのため、住宅ローンを借換える際にも、どちらの金利タイプを選択したほうがよいかの判断は難しいと思います。
そこで今回は、住宅ローンを借換える際に「変動金利型」「固定金利型」のどちらを選べばよいかについて、解説していきます。

固定金利型・変動金利型の特徴

固定金利型は5年、10年などの一定期間、あるいは全期間を通して金利が固定となるため、金利上昇リスクがなく、毎月の返済額を一定にできるメリットがあります。
しかし、変動金利型と比較すると、金利が高めに設定されているので、ローンを完遂するまでの間で大きな金利上昇がなければ、変動金利型を選択した場合より、トータルの返済額が多くなってしまう可能性も。
一方、変動金利型は固定金利型より金利が低めに設定されているため、金利が上昇しなければ、固定金利型より毎月の返済額をおさえられます。一方、半年に1回金利が見直されるという特徴があるため、常に金利上昇リスクを抱えていなければなりません。
日本は長期に渡り、低金利時代が続いているため、今後も大きな金利上昇はないという見方が強まっていますが、30年、35年など長期間のローンを組む方には、返済の見通しが立てづらいというデメリットがあります。
したがって、それそれのメリット・デメリットを把握したうえで、どちらのタイプが自身にとって適切なのか、よく考えて選択しなければなりません。

近年は変動金利型を選ぶ人が増加

住宅金融支援機構が実施した「住宅ローン利用者調査(2020年5月調査)」の結果によると、2019年10月~2020年3月に住宅ローン(フラット35を含む)を借入れた方の金利タイプ別の利用状況は、「変動金利型」が60.2%、「固定期間選択型」が26.6%、「全期間固定型」が13.2%でした。
全体的に変動金利型を選択する方が増加しており、これは日本の住宅ローン金利が長年に渡り、低金利状態を維持していることの影響であると考えられます。
そこで実際に、日本における住宅ローン金利の推移をデータで確認してみましょう。
以下は、民間金融機関の住宅ローン金利推移を表すグラフです。

出典:住宅金融支援機構「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」より転載

1984年のデータによると、当時の住宅ローン金利は8%を超える高い水準にあったことが読み取れます。
しかし1990年代に入ると、バブル崩壊の影響を受け、日本銀行が金利引下げによる金融緩和政策に乗り出したことから、住宅ローン金利は大幅に下落。その後、1990年代後半以降は変動金利型、固定金利型を含め年2~4%で推移しています。
かつては金利上昇を不安視する声もありましたが、2021年現在も大幅な上昇の気配はなく、今後も当面の間は低金利が続く見通しであることから、変動金利型を選ぶ方が増加しています。

借換え時は「変動金利型」がおすすめ

住宅購入時と同様に、住宅ローンを借換える際には再度、「変動金利型」か「固定金利型」の選択に迫られます。ただし住宅ローンの選び方は、当初の住宅購入時とは考え方を変えなければなりません。
なぜなら、住宅ローンを購入してから時間が経過しているので、住宅購入時と違う状況が生まれているからです。特に、住宅ローンを借換える際に「住宅ローン返済期間が15年以下」や「ローン残債が住宅購入時の半分以下」の状況であれば、「変動金利型」を強くおすすめします。

返済期間が15年以下だと変動金利型を選んでよい理由

次の条件で、住宅ローンを組んだ場合の金利上昇リスクを毎月の返済額で確認してみましょう。

【返済期間が長期の場合】

  • 期間:35年
  • 金額:3000万円
  • 金利:1.0%(変動金利)
金利 毎月の返済額 金利上昇リスク 返済額の増加率
1.00% 8万4685円 - -
2.00% 9万9378円 +1万4693円 17.35%
3.00% 11万5405円 +3万770円 36.33%

金利が1.0%上昇すると毎月の返済額がこのように変化します。

【返済期間が短期の場合】

  • 期間:15年
  • 金額:1400万円(※)
  • 金利:1.0%(変動金利)
金利 毎月の返済額 金利上昇リスク 返済額の増加率
1.00% 8万3789円 - -
2.00% 9万91円 +6302円 7.52%
3.00% 9万6681円 +1万2892円 15.39%

金利が1.0%上昇すると毎月の返済額がこのように変化します。

長期の住宅ローンを組んでも、返済が進むと当然、残り期間における返済額も減っています。
このように、「返済額」が少なくなり、「返済期間」が短くなると、金利上昇が家計に与えるリスクも小さくなるため、変動金利型の住宅ローンを積極的に選択してよいことがわかります。

繰上げ返済をして、住宅ローン残高が契約当初の半分程度になった場合でも、同様に考えられるはずです。

※返済期間が15年ならよくて、16年が不適切というわけではありません。
返済期間が短い場合には、変動金利型でも金利上昇リスクが家計に与える影響がそれほど大きくないことを示しています。15年という年数は目安として考えてください。
※「3000万円・35年・金利1.0%」で返済を継続した場合、20年後の残高は1414万9840円となることから、1400万円を用いています。

自分に適したローンを選択する

これまでは不動産購入時に契約する住宅ローンは、固定金利型が望ましいという意見が主流でした。なぜなら、変動金利型を選択すると、将来的に金利が上昇した場合にローン返済額が増加する「金利上昇リスク」を恐れる方が多かったからです。
しかし、現在の日本は、金融機関によって住宅ローン金利が1%を切るほどの超低金利時代に入っています。さらに、1990年代後半以降に大きな金利上昇が起きていないことから、金利上昇リスクがある点を踏まえても、変動金利型を選ぶ方が増えています。
もちろん、金利の動きを完璧に予測することは不可能なので、変動金利型を選択した場合は、景気の動向、金利の推移などに注意する必要があるでしょう。
特に長期間の住宅ローンを組む方の場合、20年あるいは30年以上先における金利の状況が関係してくるため、返済の見通しが立てづらいはずです。したがって、固定金利の利率で十分に返済の見通しが立つ方は、固定金利型を選んだほうが無難です。
一方、借換えの場合は、返済期間が短いケース(15年以下)も多く、金利上昇リスクが少ないので、変動金利型がおすすめです。
自身にとって適切な金利タイプを選べるように、「変動金利型」「固定金利型」それぞれの特徴をしっかりと理解しておきましょう。


執筆者(2014年8月執筆)

中村 諭(なかむら さとし)

住宅ローンソムリエ(R)、ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、貸金業務取扱主任者


※本記事は、2021年3月時点の情報に基づき一部内容を修正しました
監修者:清水 みちよ(宅地建物取引士)


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